今年6月10日、井上ひさし氏、梅原猛氏、大江健三郎氏、奥平康弘氏、小田実氏、加藤周一氏、澤地久枝氏、鶴見俊輔氏、三木睦子氏による「九条の会」が立ち上げられ、アピールが出されました。
今、日本では、第9条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭してきています。

日本と世界の平和な未来のために、このくわだてを拒むことは、現代に生きる私たちの責任となっています。なし崩し的に有事法制の制定や自衛隊の海外派兵、多国籍軍への参加がすすめられ、さらには非核三原則や武器輸出の禁止などの重要な施策をも無きものにしようとようとする動きがひろがっています。
来年は、ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下と第2次世界大戦終結から60周年にあたります。第2次世界大戦ではアジア人と日本人2300万人の尊い命が失われました。こうした犠牲の上にたって生まれたのが第9条です。9条の存在こそ、半世紀以上にわたって平和な社会を築き上げてきた原動力です。

そのために9氏によるアピールでは、「平和を求める世界の市民と手をつなぎ」、「あらためて憲法9条を激動する世界に輝かせ」ること。そして、「国民一人ひとりが、9条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくこと」と、「憲法を守るという一点で手をつなぎ、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始め」ようと呼びかけています。

私たちは、この「九条の会」アピールに応え、「『九条の会』アピールを支持する医師・医学者の会」(略称:「九条の会・医療者の会」)を発足させることにしました。
「生命と健康を守る」という医師・医学者の立場と最も矛盾する行為が戦争です。「戦争をしようとする国」への動きに、最も敏感にならなければならない立場にある医師・医学者が「憲法9条」を守る一点で手をつなぎ、アピールしていくことが重要であると考えます。

731部隊の例に触れるまでもなく、過去の戦争では生物兵器などに医療・医学の技術が転用され、人種差別なども含め、大量殺戮に医師・医学者が加担した苦い歴史があります。医師のヒューマニズムさえ失われるのが戦争です。戦費や軍事優先のため、社会保障もさらに後退させられ、人権の制限にもつながります。また、9条の改憲とあわせて、25条の生存権保障を、国民の互助と自己責任の制度に理念を根本から変える動きもあります。
私たちは、「生命と健康を守る」ことを社会的使命とする医師・医学者として、憲法25条による生存権としての社会保障の充実を求めるとともに、あらゆる戦争政策、戦争につながる一切の動き、とりわけ憲法9条「改正」の動きに反対します。多くの医学者・医療担当者の皆さんに、この「九条の会」アピールに賛同して頂くよう、強く呼びかけます。

私たちは、「九条の会」アピールを多くの人々に伝え、賛同者を広げていくこと、そのためにポスターの作成、新聞などへの意見広告や学習会、シンポジウムの開催なども検討します。
別紙ご案内の方法で、「九条の会」アピールにご賛同いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2004年11月5日